2010年11月25日木曜日

事故から一年が経過

 早いものであれから一年が経ちました。ようやく最近ケガの痛みを意識せずに過ごせるようになってきました。とはいっても左膝、右腕の関節に衝撃や極度の負荷が加わるような動作、運動を避けているためですが。

 趣味のトレッキングも今年は控えました。
 リハビリ運動のみ...。
 来年こそはニュージーランドのグレート・ウォークを完全踏破したいものです。10コースあって、あと4コース残っています。ミルフォード・トラックはよくテレビで目にすることがあるのではないでしょうか。小生も3日かけて歩きました。それ以外にもニュージーランドには美しいコースが沢山あり、何度でも訪れたくなります。

 複視の方は相変わらず視野の周囲に残っており、頭部を右に傾けるとズレは大きくなります。小生の場合、右側頭部の強打のため右脳の神経と左目の眼球筋のダメージが大きかったようです。   
 今でも疲れたり風邪を引いたりすると左目の制御がうまくいかなくなる症状がでます。これは右脳の眼球を制御する神経系の損傷が残ってしまった結果でしょう。私の複視の原因は眼球の運動を支配する神経と眼筋の損傷の両方の要因が重なって発症しているため外科手術をしても完全には回復できなかったと思います。手術をしても10度以上のズレを5度内外に調整できれば良いほうで、ドンピシャリと0度に出来るほどの神業は期待できません。ですから手術で残ったズレはプリズム(偏光)メガネで補助するというのが眼科的処置の最善策なのでしょう。
 幸い私の場合は1年かかりましたが、自然治癒で2度程度のズレになるまで回復しました。自然治癒の兆しがある間はあせらずに手術しないほうが良い場合もあるということです。半年から1年ほどは回復力が期待できる場合があるので手術は慎重にするべきでしょうね。手術してしまうと自然治癒プロセスが絶たれてしまいますから。私の場合、手術せずに自然治癒を期待する決断をしたことが正しかったということになります。全ての患者さんに当てはまるとは限らないので担当医とよく相談して決めるべきでしょう。
 ただし回復するといっても、1年もの長い間複視の症状に耐えて生活することは大変な苦労を伴いますので誰にでも薦められることではありません。以前にもこのブログで苦労話を書きましたが本当に大変です。視覚がハッキリしないと意識もぼやけたようになり注意力は散漫になってちょっとした簡単なことでもミスしたりで物がズレて見えるだけの苦労に留まりません。

 プリズムメガネでもズレが大きいところは壁や床のラインがギザギザな階段状になって見えてしまいます。それを考えると今開発中のIG21(Intelligent Glasses21)、21世紀の賢いメガネは15度や20度ズレていようが視野は限定されるものの正常に見え立体視もできるようになるというのは画期的な発明となります。完成したら見せて欲しいと眼科の先生もおっしゃっていましたが複視や斜視の患者の方々には朗報となることでしょう。このメガネは毎日変化するズレの度合いをその場で調整できるのでプリズムメガネよりも目の状態に簡単に適応させることが可能です。リハビリ中にこのメガネがあれば闘病の苦労も半減していたと思います。メガネに目を合わせなければならない時代は終わったのです。
 
 今後の複視の症状はどうなりますことやら。
 眼筋や視神経が衰えたりすると数度ほどズレが悪かった頃の状態に戻ることが予想されます。事故直後のような大きなズレにには戻ることはないと思いますが。メガネを作り替える必要性が出てくるかもしれません。
 
 まあ完全に事故前の状態まで神経や筋肉が回復することは期待できないのかもしれません。あとは怪我した膝を腕が慢性の関節痛や関節炎にならないよう生活を工夫することだけです。といっても現実の生活はいつもそうできるわけではありません。
 最近気づいたのは右耳の内部で高周波のような弱い雑音を感じることです。静かなときに特に不快に感じます。実際に周囲で音がしているわけではなく耳の内側の頭の中で音が発しているように感じるのです。現実に音がしているわけではありませんが常時不快な、キーン(シーン)といったような音を感じます。右脳のダメージは目以外に、聴覚にも及んでいたのでしょう。現代医学では治療できない問題でしょうか。

 それにしても我ながらよく耐えてここまで回復できたものだと感心します。
 当時はただ必死で痛みに耐え回復するためにリハビリに専念することだけ考え、余計なことは考えないようにしていましたが。回復しないとお先真っ暗でしたね...。
 
 今回の事故の起こる確率は隕石が人に直撃する確率に近いのではないかと思います。それだけ低いが...でも、起こることもあるんですね。バイクの直撃ではなく宝くじでも当たってくれることなら良かったのですが。

 ケガがある程度回復したと入ってもまだこれから苦労はあることでしょう。

 皆様も交通事故には気おつけましょう。加害者、被害者ともに生涯の苦労を負うことになります。

2010年9月13日月曜日

骨折完治後の関節痛

 左膝の骨挫傷が完治したものと考えていたが、事故から10ヶ月過ぎた7、8月になって毎日弱い痛みが常時、左膝周囲に感じるようになる。急ぎ足が苦痛になるくらいにまで痛みが伴うようになってしまう。そこで7月以前と痛みを感じ出した後の歩き方の違いを比べてみた。
 療養中は膝に負担がかからないよう、膝をかばった歩き方をしていたのに対し、7、8月は事故前のような歩き方に戻っていたことに気づく。つまり階段では駆け降りるような(膝に衝撃が加わるような)動作をし、平地は早歩きをしていた。この歩行スタイルは膝に大きな負担になっていたようだ。 
 このことを確かめるべく8月後半からしばらく階段の昇降時は駆けて昇降する動作を控え、早歩きもやめてみた。その結果9月に入ってそれまで毎日感じていた痛みは治まってきた。とはいっても足が疲れてうっ血した状態になるといくら膝をケアした歩き方をしいても夜になると痛みを感じる。
 まだしばらくは膝に衝撃が加わるような動作は控える必要がありそうだ。1、2千メートル級の登山や10キロ、20キロといった長距離を踏破するほどには回復していないようだ。


左腕の骨折箇所を止めていたチタン製の固定金具

 右腕の骨折箇所は補強金具の除去手術(抜釘術)も終わり順調に回復している。ただ抜釘から2ヶ月したときに切開した傷跡の真ん中辺り(術後から少し盛り上がっていた)が化膿して膿みが搾り出せるほどになる。1週間ほど毎日消毒したら納まり、盛り上がりも減ったようだ。術後ドレーンで抜けなかった物が残っていてて異物として排泄されたのだろうか?
 右腕の傷は肘掛に腕を載せたとき、丁度傷口(10cmほど)が当たって擦れ、弱い痛みでいつも気になる。また肘のかどに刺すような痛みが時々起きることも気になる。

 これが事故から10ヶ月目の骨折に関する状況だ。

 複視はプリズム(偏光)のメガネで二重に見える症状と眼筋の疲労が格段に改善されている。おかげでやっと8月になって事故前のような読書ができた。つまり読書に熱中できるほどに回復してきた。それまでは字のズレと眼筋の疲労で読むことに集中できなかった。
 以前、映画でみた「ビューティフル・マインド」を本で読む。ナッシュというノーベル経済学賞を受賞したアメリカ人数学者の人生を語ったもの。感想はここで述べないが 1時間半で映像としてそれを表現すること自体に無理はあるのは分かるけれど、題名と内容のギャップを強く感じる。天才数学者が精神を患って不遇の人生を歩んだけれどノーベル賞を貰ってハッピーエンド...といった映画の内容と、現実は...異なる。ハリウッド流の美しい虚構を幻滅させたくない方は本を読まないほうが良いだろう。
 脱線したが、複視の症状に邪魔されずじっくり読めるまでになったことはとても嬉しいことだ。
 あとはIG21(Intelligent glasses 21 -現在開発中のヘッドマントディスプレイ)が完成すれば目のハンディキャップもそれほど気にしなくても良くなることでしょう。

2010年8月6日金曜日

複視用ヘッドマウントディスプレイ

プリズムの入ったメガネを掛けて3週間ほど経ちますが、見る角度でレンズの歪みや像の鮮明度が変わるので少々慣れるのに時間がかかりました。コーヒーを飲むときや自分の汗でレンズが曇ることにも閉口します。メガネを掛けないほうが如何に自然か...を実感。


前回ヘッドマウントディスプレイについて触れましたが、ここ十年ほどで随分様変わりしたようでインターネットで調べると単眼、両眼タイプのものから光学式、網膜直接投影タイプと製品も多様化してきています。もっぱら売りは3D映画鑑賞、ゲーム用やコンピュータ画面を片方の目で見ながら作業するような作業に限定されています。

両眼タイプ(AR Vision)

単眼タイプで網膜直接投影(ブラザー社製)

  網膜に直接投影するタイプは遠視、近視の人でも鮮明な映像を知覚できるので断然こちらのタイプがモアベター。でも単眼式のHMDHead Mounted Display以下省略してHMDと記述します)しか見当たりません。技術的に難しいのと高価になりますから。

私の考えているHMDはディスプレイの前面に薄くて小型(携帯のCCDカメラのような)のカメラを複眼状に配列し、通常の視野の120から150%を確保する。複眼CCDカメラの方が薄くてレンズの歪みを最小に出来ます。それから得られる映像をコンピュータで処理してHMDのディスプレイに左右別々の映像として投影し、複視のズレを補正しようというもの。将来的にはコンピュータもウェアラブルなものにして携帯電話並のコントローラーにしようと考えています。


今現在、試作機の設計とハード、ソフトの開発準備をしています。最初は安いウエブカメラ、数万円の3DHMD(左右別々の映像を表示できないと意味がありません)、ビデオキャプチャを組み合わせてやってみる予定です。これができると視野は限定されますがテレビを見たりコンピュータで作業する上で、複視・斜視患者の障害は十分改善されると思います。


手術でしか治せない上下斜筋のバランスの崩れから生じる回転ずれに対し、特に有効であると期待されます。CGの技術を利用すれば画像を移動・回転・スケーリングするのはお手の物。

斜視、複視によるハンデを軽減し、更にこのHMDを着けていれば人間の視覚能力を拡張できるようにしたい。病状によるハンデ以上に別な能力を付加できれば社会生活にプラスに働くでしょう。CCDカメラを換えるだけで顕微鏡映像を見たり、暗視できるとか、魚眼レンズのように広い視野を見ることが出来るといったことも可能になります。工夫すれば正視で360度見渡せたり、もちろん3D映画を楽しむことも出来ます。仮想現実の可能性が現実に活かせる訳です。

次回から試作過程や発見する利点、問題点を紹介していこうと思います。


2010年7月22日木曜日

複視用矯正メガネ

 やっと待望のメガネが出来て掛けて見ました。

 なんと目前の木々の奥行きがはっきり見えることでしょう...。手前の葉が後ろの葉から浮き出て見えることに感動。正常な目では視差を正しく処理して立体視できるのですが今まで複視のズレでそれが機能していなかったわけです。まるで初めて3D映画を見たときのような驚き。複視になると遠近感が失われることは理屈で分かっていても、ここ8ヶ月以上も2Dの世界にいたことを痛感。

 手元の距離の細かい作業もズレずによく見えるし遠近感が戻ったのでコンピュータの細かい部品の組み立てや結線も難なく行えた。数十分もかかった作業が数十秒でクリアー。かなりうれしいですね。掛けているメガネには、2度のズレを補正する偏光レンズが組み込まれているので当然の結果なのですが、実際に体験してみると、事故以前では当たり前のことが出来て一々感動します。
 ただ問題は遠近両用メガネなので見る距離で少々見る角度を調整してやらないと良く見えないこと、見る方向を変えるとき遠近の複合レンズの境界付近で像が少々歪むことでしょうか。

 今までメガネを掛けたことがないのでお手入れの手間も増える。レンズが曇ったり、ちょっとしたホコリや汚れが気になる。目はその辺のことを無意識に処理してくれていることを考えると実に良く出来た自然の創造物です。

 このメガネで大部分、日常の視覚障害からくる負担は軽減するでしょう。

 しかし私の場合、回転ズレからくる問題は残ります。偏光レンズは縦横のズレには対応できますが網膜像が回転するズレには対応できません。以前述べましたが、上下斜筋のバランスが崩れていて水平線が左目で時計回りに、右目が反時計回りに数度回転した状態で知覚されるので、このズレを補正して両眼像が一致して知覚認識できるようにするにはもう一工夫する必要があります。

 そこで考えたのは複眼型CCDカメラ+GPU+ヘッド・マウント・ディスプレイを組み合わせたシステムを開発することです。これだと知覚する映像を自在に操作でき、ズレの大きい目の網膜に結像させて複視(網膜に直接結像できる方式をとれば近視、遠視にも対応できる-技術的に難度が高くなりますが)を解消できます。まだ設計段階に過ぎませんが、今ある先端技術を組み合わせて応用してやれば実現できると考えています。

 最初は焦点距離と限定された視野で、例えば複視、斜視患者がズレを補正したパソコンの仮想ディスプレイ上で問題なく作業できるようにすることからスタートしようと計画しています。そうすれば斜視、複視患者でもパソコンが不自由なく操作でき、テレビや読書を寝っころがりながらリラックスして楽しめるようになるでしょう。

 自作複(斜)視用電子メガネの試作第一号を早く紹介できるようになるといいですね。これを応用していくと人間の見えない視野領域を視たり(前をみながら後ろが見えるとか)、暗視ゴーグルのように可視光域以外の電磁波を可視化できます。当然インターネット画面を見ながら景色を眺めること、視野の一部に顕微鏡のような拡大映像を表示させたりと、近未来のメガネはどんどん進化していくことでしょう。視線とまばたきを組み合わせて目で絵を描いたりアプリケーションを操作することもできる。

 メガネの常識が大きく変わる時代に突入しているのです。

2010年7月15日木曜日

複視用メガネ

 事故から8ヶ月ぶりに複視の検査にいってきました。
 やはり左眼球に2度のズレが残っていることが分かりました。目測で計算していたズレと一致したので、私見の分析の正しいことが証明された形です。自分の両眼がどのようにずれているかも専門医の分析と同じでした。ただ紹介しているリハビリが複視の治療に直接、効果があるかどうかは”?”ですが。しかし多少のズレを補正する目の補完機能を高めたり、眼筋の動きを円滑にすることや回復を補助する効果はあると思います。
 複視のズレを考える場合注意しなければならないことがあります。見かけ上のズレは実際の眼球のズレより小さくなるからです。何故かと言うと無意識にズレを補正する目の補完機能が働くためです。その結果、一致しているようでも目が疲れてくるとズレが戻ってくるような状態になります。また眼筋に無理な仕事をさせているので目の疲労は正常な場合より何割か増すことになります。私の場合も、目の疲れ方がひどく二、三日休まないとズレを補正する力が回復しなくなり、無理に目を使うと左目をかばっていた右目が疲れすぎて目をあけていられない状態になります。


 ようやく数度のズレで落ち着いてきたので偏光メガネで対処することにしました。事故直後、15度くらいのズレがあったの随分回復したものです。とはいっても手元の距離で数ミリずれていても細かい図面や小さなコンピュータ部品を扱うとなると大変な作業となります。1ミリずれても問題になりますから。今作ってもらっているメガネで作業の疲労度が軽減できれば良いのですが、どうなりますことやら。確かに病院の検眼用補正メガネを掛けてみると随分楽にズレなく見えるので効果は期待できると思います。今までメガネなど掛けたことがないのでどんな感じになるのか、メガネが出来上がってからです。

 できれば完全に複視が回復してくれれば良いのですが複視発症からもうすぐ1年が経とうとしている今、そろそろ現実を受け入れた生活スタイルを考えなくてはいけないません。回復中はどうしても楽観的な希望をもっていないと、いろんな生活上の障害に耐えていけませんからね。
 しかし現実はそう甘くありません。外傷性の複視は後遺症が残るということは予め眼科医に言われていたので、ある程度は覚悟していましたが...、やはり患者としては完治を心の隅っこではねがっていますよね。病院にいくと現実のズレにいやがおうでも直面させられ、無意識にズレが小さく見える姿勢やズレを無視する習慣が身についていたことに気づかされます。自分では良くなっていると思いたい気持ちがそうさせているのでしょう。

 次回は矯正メガネの試用体験を紹介します。

 

2010年6月22日火曜日

身体や頭を動かしながら行うトレーニング方法

5.頭や上体を回しながら一点を見つめるトレーニング

 2~4の訓練(前回のブログ)は視線を滑らかで規則的に動かす訓練でしたが、今度は視線を動かさずに頭や体を動かして物を見るトレーニングを行います。
 何故こんなトレーニングを始めたかというと、掃除機をかけながら床を見ていると突然、目が動かなくなったり、ズレて見えることで「めまい」が頻繁に起きていたからです。この「めまい」は退院後4ヶ月ほど続きました。それまでの「めまい」は入院中だったので座ったり、横になっていたときのものが主で、日常の家事動作で起きるとは意外でした。「めまい」に慣れ、少しでもめまいの度合いを軽減するようにと、このトレーニング行いました。

 訓練の要領は立った状態で2~3m先の物を見ながら視線を動かさないように上体を回します。これを20回、1セットで2、3回行う。
 同様に視線の先を動かさず一点を見つめたまま、頭だけを左右に回す。これも20回を3セットほど行います。

 このトレーニングは6でやる歩行時のリハビリに役立ちます。


6.歩きながらのトレーニング

 3の訓練で一致できるようになった視野領域でも歩きながらだとズレて見える状態になります。静止した状態で一致させられるよう矯正訓練しても、瞬間的に一致するように調整できていないので、歩きながら視野像がどんどん変化していく状況には対応できません。そこで障害物が少なく、平坦で広々とした公園で散歩しながら周囲を見る訓練を行います。

 歩きながら足元や左右を見渡す訓練が主です。歩行のスピードに視線がスムーズについていくように目を動かし、またズレた左右の視野像が一致するように目を凝らします。
 時々立ち止まって3の訓練(前回のブログ参照)を行います。トレーニング中は、視線の先に人がいないときにやりましょう。相手が勘違いしておかしな人が変な目つきで見ていると思われますから。こちらは必死に複視の矯正トレーニングをしていることなど分かってもらえません。

 このトレーニング中は、複視だと遠近感がなく、地面の凹凸が良く分からないので、つまづいたり、転倒しないように気をつけましょう。私の場合、左膝を骨折していたので歩行リハビリを兼ねていましたから余計に大変でした。おまけに雪道や凍結した路面で思うようにトレーニングできず苦労したものです。滑って転んだりすると治療中の骨折した右腕がもっとひどくなるという不安を抱えながらトレーニングしたものです。少なくとも一日一回くらいは歩行中に、道の凹凸につまづいたり、段差に足をとられて転倒しそうになったり、滑って転びそうになりました。階段の昇降では最後の一段を踏み外して痛い思いをしたこともあります。

 歩いているときは視野の中央部以外ボヤけていて、感に頼って歩いていました。
 人とすれ違う時はぶつからないように距離を多めにとったりしていましたが、松葉杖を持っているときはすれ違う人も注意を払ってくれますが、それがないと、通行人の中には、平気でぶつかってくるようにすれ違って来るので冷汗ものでした。

 狭いところを歩く訓練も必要です。
 買い物では沢山の陳列品からほしい品物を見つけ出したり、陳列棚の狭い間を移動することにも注意が必要です。パッケージの文字を読むことも大変ですから、ちゃんとダブらずに見えていれば何の苦労もしないことに何倍も気を使わなくてはなりません。品物を選ぶのに気をとられて他の買い物客の通行を邪魔してしまい、文句を言われたり、積み上げてあった商品を崩してしまったり...、後片付けが大変でした。

 失敗や苦労にめげず、日常動作のなかで目を動かすよう心がけ、時々は疲れない程度にずれた像を一致させる矯正訓練を気長にやりましょう。面倒くさがって何もやらないと目の動かしにくい範囲が改善されていきません。手足の関節を動かさないと硬直してしまうように、目もよく動かさないとズレが固定化し後遺症として残ってしまう範囲が広がってしまいます。

2010年6月13日日曜日

座ったままでのリハビリ方法

 2.眼筋の協調コントロールトレーニング

 私の左目は視線を左側から右側に移動しようとすると、内外側筋の伸縮がうまくコントロールできなくなり左目の動きがロックされて、勝手に黒目が下側に寄ってしまい物を見ることができなくなることが頻繁に起きました。現在ではロックこそしませんが右側を見ようとするとゆっくりとしか移動できない症状が残っています。
 また視野の四隅(周縁部)を見ようとすると目の奥が突っ張った状態になり、事故後2、3ヶ月は筋肉痛のような強い痛みがありました。痛みといっても筋肉のストレッチで感じるようななものです。徐々に痛みは弱くなっていき最近はツッパリ感が少し残る程度に回復しています
 こんな具合だったので両目を滑らかにかつ、規則的に動かす訓練が必要でした。眼筋のツッパリ感が軽減されないと目を自由に動かせません。そこで次のようなトレーニングを続けました。

 床、壁、天井の直線的な目地などのラインをなぞるように連続的に目で追います。最初はゆっくり、慣れてきたらスピードを変えて。1往復を20回、1セットにして数回行う。これを1日3~4回。
 私の場合は6回から7回ほどやっていました。時々直線的な軌跡ではなく曲線的なものも取り入れてトレーニングに変化をつけます。
 トレーニング中は、視線の先の像がズレて見えていても気にせずにラインを走査する。焦点を合わせながら視線を規則的な対象に沿って動かすことが重要です。

 このトレーニングを退院後、4ヶ月ほど行いました。今ではあまりやっていません。最近は前回述べた眼球のストレッチ運動とズレを矯正するトレーニングくらいになっています。
 

3.ズレを矯正するトレーニング

 このトレーニングは数ミリから数センチ程度のズレとなった視野領域で行う。何10センチもずれたところでやってもストレスが溜まるだけで効果はありません。また、ほぼ一致して見える領域がない場合には行えません。

 私の場合、一致した領域が一部残っていたので、このトレーニングが可能となりました。つまり、正常に見える領域とズレる領域の境界の間を頭を少し傾けて、交互に自分の目の筋肉でどんな差異が生じてズレるのかを感覚的に比較しながら行います。

 まず遠くのものから行い、徐々に2,3メートル手前へとトレーニング対象を近づけていきます。

 少しズレて見える物を見つめて良い側の視線を動かさないように注意しながら(といっても動いてしまいますが、気にせずに気持ちだけは動かさないよう心掛ける)悪いほうの目をほんの少し上、下、左、右、斜めに動かす気持ちで両眼の像が一致するように目を凝らします。これを10秒くらい行い、少し休んでまた同じことを繰り返します。

 ほんの数秒でもズレが一致したときはその時の眼筋の感覚を忘れないよう、何度も同じトレーニングを反復し、一致した感覚を自覚するようにします。
 私の場合は右目を動かさないようにしながら左目を微妙に動かして像が一致するときの左目の状態を探しました。最初は当てずっぽうに動かして一致して見える左目の状態を模索しましたが、自分の目がどのようにずれているのか解ってから、左目の視線を少しだけ右上を見るようにシフトさせるようにすると一致することができるようになりました。

 このトレーニングで1、2秒でも一致させられたなら、2~3週間続けていると数時間以上、持続させられるようになりました。数時間以上、安定して一致させられるようになったらトレーニングの領域を悪い側に少し移動して同様のトレーニングを行います。
 こうやって徐々に一致する視野領域の範囲を拡大していきました。頭を前後、左右に180度の範囲でほぼ一致させられるようになるまで半年近くかかったと思います。今現在も1日に数回行っています。

 ただし、こうやってズレを矯正した場合、どうしても疲れてくると視野の周縁部分からズレが戻ってきます。ひどいときは2、3日氏や全体に複視の症状が戻ってしまうこともありました。
 眼筋を弛緩させた状態で両眼の位置にズレが残っている間は、一時的にズレを一致させられていてもトレーニングによって矯正しているだけなので複視が完全に治ったということではありません。 しかしこの矯正トレーニングを続けることで、半年後には、日中の間だけでも、ズレを一致させていられるようになりました。

4.頭を傾けて視線を走査するトレーニング

 頭の傾斜角度によって個々の眼筋の伸縮度合いが違うので、のトレーニングで一致するようになった視野領域でも頭の傾斜角度を少し変えてしまうと両眼の像がズレてしまいます。

 そこでズレて見える時の状態に頭を傾けたままで、で述べたリハビリを行います。

 次回は身体や頭を動かしながら行うトレーニング方法を紹介します。