2010年6月22日火曜日

身体や頭を動かしながら行うトレーニング方法

5.頭や上体を回しながら一点を見つめるトレーニング

 2~4の訓練(前回のブログ)は視線を滑らかで規則的に動かす訓練でしたが、今度は視線を動かさずに頭や体を動かして物を見るトレーニングを行います。
 何故こんなトレーニングを始めたかというと、掃除機をかけながら床を見ていると突然、目が動かなくなったり、ズレて見えることで「めまい」が頻繁に起きていたからです。この「めまい」は退院後4ヶ月ほど続きました。それまでの「めまい」は入院中だったので座ったり、横になっていたときのものが主で、日常の家事動作で起きるとは意外でした。「めまい」に慣れ、少しでもめまいの度合いを軽減するようにと、このトレーニング行いました。

 訓練の要領は立った状態で2~3m先の物を見ながら視線を動かさないように上体を回します。これを20回、1セットで2、3回行う。
 同様に視線の先を動かさず一点を見つめたまま、頭だけを左右に回す。これも20回を3セットほど行います。

 このトレーニングは6でやる歩行時のリハビリに役立ちます。


6.歩きながらのトレーニング

 3の訓練で一致できるようになった視野領域でも歩きながらだとズレて見える状態になります。静止した状態で一致させられるよう矯正訓練しても、瞬間的に一致するように調整できていないので、歩きながら視野像がどんどん変化していく状況には対応できません。そこで障害物が少なく、平坦で広々とした公園で散歩しながら周囲を見る訓練を行います。

 歩きながら足元や左右を見渡す訓練が主です。歩行のスピードに視線がスムーズについていくように目を動かし、またズレた左右の視野像が一致するように目を凝らします。
 時々立ち止まって3の訓練(前回のブログ参照)を行います。トレーニング中は、視線の先に人がいないときにやりましょう。相手が勘違いしておかしな人が変な目つきで見ていると思われますから。こちらは必死に複視の矯正トレーニングをしていることなど分かってもらえません。

 このトレーニング中は、複視だと遠近感がなく、地面の凹凸が良く分からないので、つまづいたり、転倒しないように気をつけましょう。私の場合、左膝を骨折していたので歩行リハビリを兼ねていましたから余計に大変でした。おまけに雪道や凍結した路面で思うようにトレーニングできず苦労したものです。滑って転んだりすると治療中の骨折した右腕がもっとひどくなるという不安を抱えながらトレーニングしたものです。少なくとも一日一回くらいは歩行中に、道の凹凸につまづいたり、段差に足をとられて転倒しそうになったり、滑って転びそうになりました。階段の昇降では最後の一段を踏み外して痛い思いをしたこともあります。

 歩いているときは視野の中央部以外ボヤけていて、感に頼って歩いていました。
 人とすれ違う時はぶつからないように距離を多めにとったりしていましたが、松葉杖を持っているときはすれ違う人も注意を払ってくれますが、それがないと、通行人の中には、平気でぶつかってくるようにすれ違って来るので冷汗ものでした。

 狭いところを歩く訓練も必要です。
 買い物では沢山の陳列品からほしい品物を見つけ出したり、陳列棚の狭い間を移動することにも注意が必要です。パッケージの文字を読むことも大変ですから、ちゃんとダブらずに見えていれば何の苦労もしないことに何倍も気を使わなくてはなりません。品物を選ぶのに気をとられて他の買い物客の通行を邪魔してしまい、文句を言われたり、積み上げてあった商品を崩してしまったり...、後片付けが大変でした。

 失敗や苦労にめげず、日常動作のなかで目を動かすよう心がけ、時々は疲れない程度にずれた像を一致させる矯正訓練を気長にやりましょう。面倒くさがって何もやらないと目の動かしにくい範囲が改善されていきません。手足の関節を動かさないと硬直してしまうように、目もよく動かさないとズレが固定化し後遺症として残ってしまう範囲が広がってしまいます。

2010年6月13日日曜日

座ったままでのリハビリ方法

 2.眼筋の協調コントロールトレーニング

 私の左目は視線を左側から右側に移動しようとすると、内外側筋の伸縮がうまくコントロールできなくなり左目の動きがロックされて、勝手に黒目が下側に寄ってしまい物を見ることができなくなることが頻繁に起きました。現在ではロックこそしませんが右側を見ようとするとゆっくりとしか移動できない症状が残っています。
 また視野の四隅(周縁部)を見ようとすると目の奥が突っ張った状態になり、事故後2、3ヶ月は筋肉痛のような強い痛みがありました。痛みといっても筋肉のストレッチで感じるようななものです。徐々に痛みは弱くなっていき最近はツッパリ感が少し残る程度に回復しています
 こんな具合だったので両目を滑らかにかつ、規則的に動かす訓練が必要でした。眼筋のツッパリ感が軽減されないと目を自由に動かせません。そこで次のようなトレーニングを続けました。

 床、壁、天井の直線的な目地などのラインをなぞるように連続的に目で追います。最初はゆっくり、慣れてきたらスピードを変えて。1往復を20回、1セットにして数回行う。これを1日3~4回。
 私の場合は6回から7回ほどやっていました。時々直線的な軌跡ではなく曲線的なものも取り入れてトレーニングに変化をつけます。
 トレーニング中は、視線の先の像がズレて見えていても気にせずにラインを走査する。焦点を合わせながら視線を規則的な対象に沿って動かすことが重要です。

 このトレーニングを退院後、4ヶ月ほど行いました。今ではあまりやっていません。最近は前回述べた眼球のストレッチ運動とズレを矯正するトレーニングくらいになっています。
 

3.ズレを矯正するトレーニング

 このトレーニングは数ミリから数センチ程度のズレとなった視野領域で行う。何10センチもずれたところでやってもストレスが溜まるだけで効果はありません。また、ほぼ一致して見える領域がない場合には行えません。

 私の場合、一致した領域が一部残っていたので、このトレーニングが可能となりました。つまり、正常に見える領域とズレる領域の境界の間を頭を少し傾けて、交互に自分の目の筋肉でどんな差異が生じてズレるのかを感覚的に比較しながら行います。

 まず遠くのものから行い、徐々に2,3メートル手前へとトレーニング対象を近づけていきます。

 少しズレて見える物を見つめて良い側の視線を動かさないように注意しながら(といっても動いてしまいますが、気にせずに気持ちだけは動かさないよう心掛ける)悪いほうの目をほんの少し上、下、左、右、斜めに動かす気持ちで両眼の像が一致するように目を凝らします。これを10秒くらい行い、少し休んでまた同じことを繰り返します。

 ほんの数秒でもズレが一致したときはその時の眼筋の感覚を忘れないよう、何度も同じトレーニングを反復し、一致した感覚を自覚するようにします。
 私の場合は右目を動かさないようにしながら左目を微妙に動かして像が一致するときの左目の状態を探しました。最初は当てずっぽうに動かして一致して見える左目の状態を模索しましたが、自分の目がどのようにずれているのか解ってから、左目の視線を少しだけ右上を見るようにシフトさせるようにすると一致することができるようになりました。

 このトレーニングで1、2秒でも一致させられたなら、2~3週間続けていると数時間以上、持続させられるようになりました。数時間以上、安定して一致させられるようになったらトレーニングの領域を悪い側に少し移動して同様のトレーニングを行います。
 こうやって徐々に一致する視野領域の範囲を拡大していきました。頭を前後、左右に180度の範囲でほぼ一致させられるようになるまで半年近くかかったと思います。今現在も1日に数回行っています。

 ただし、こうやってズレを矯正した場合、どうしても疲れてくると視野の周縁部分からズレが戻ってきます。ひどいときは2、3日氏や全体に複視の症状が戻ってしまうこともありました。
 眼筋を弛緩させた状態で両眼の位置にズレが残っている間は、一時的にズレを一致させられていてもトレーニングによって矯正しているだけなので複視が完全に治ったということではありません。 しかしこの矯正トレーニングを続けることで、半年後には、日中の間だけでも、ズレを一致させていられるようになりました。

4.頭を傾けて視線を走査するトレーニング

 頭の傾斜角度によって個々の眼筋の伸縮度合いが違うので、のトレーニングで一致するようになった視野領域でも頭の傾斜角度を少し変えてしまうと両眼の像がズレてしまいます。

 そこでズレて見える時の状態に頭を傾けたままで、で述べたリハビリを行います。

 次回は身体や頭を動かしながら行うトレーニング方法を紹介します。

2010年6月3日木曜日

複視のリハビリ方法

1.眼球のストレッチ運動

 事故後4、5ヶ月は視野の周囲を見ようとすると、目の奥や周囲で鈍い筋肉痛を感じていたので、眼球を動かすときのツッパリ感や痛みを取るために眼球運動のストレッチを行いました。この運動は今現在も毎日2、3回最低やっています。要領は以下のとおり。

まっすぐ前を向いて、顔はそのままにして眼球だけを動かします。

①.両目で右を3秒間見る、そして前をみる。
②.両目で右斜め上(45度)を3秒間見る、そして前をみる。
③.両目で上を3秒間見る、そして前をみる。
④.両目で左斜め上を3秒間見る、そして前をみる。
⑤.両目で左を3秒間見る、そして前をみる。

⑥.両目で左斜め下を3秒間見る、そして前をみる。

⑦.両目で下を3秒間見る、そして前をみる。

⑧.両目で右斜め下を3秒間見る、そして前をみる。
⑨.両目で右回(時計回り)りに3秒くらい眼球を回す(視線ではなく、眼球の奥からまわすように)、   そして前を見る。
⑩.両目で左回りに3秒くらい眼球を回す、そして前を見る。


 上下左右斜めに視線を送って目の動きに偏りが無いようにします。1~8を逆順にたどって1セットとし、これを1日数回やります。

 このリハビリは目の筋肉の緊張をほぐし、両眼をスムーズに動かせるようにすることが主です。今後紹介するリハビリの準備体操と考えてください。

2.眼筋の協調コントロールトレーニング

 床、壁、天井の直線的な目地などのラインをなぞるように、連続的に目で追う。最初はゆっくり、慣れてきたらスピードを変えて。

 1往復を20回、1セットにして数回行う。これを1日3~4回。私の場合は6回から7回ほどやっていました。時々直線的な軌跡ではなく曲線的なものも取り入れる。

 あまりやり過ぎないことが肝心です。やりすぎて目に疲れが溜まってしまうと、一時的に悪いときの状態に戻ってしまいます。必ず休憩しながらやります。このトレーニングは半年ほど行いました。今では時々やるくらいに減っています。

 今後、複視の回復度合いにあったリハビリ方法を段階的に紹介していきます。


2010年6月1日火曜日

どんなふうにズレて見えるかを観察(パート2)

 右目がZ軸回りに反時計回りに2度ほどズレ、左目はX軸、Z軸回りに9度くらいズレているということはどの眼筋のバランスが狂っているかを考えてみました。

眼球の運動をつかさどる筋肉は6本(下図)。



眼球を動かす脳神経は3種類らしい。

①動眼神経 - 内直筋・上直筋・下直筋・下斜筋
②滑車神経 - 上斜筋
外転神経 - 外転筋

 各筋肉の作用方向は下図。


 これらの図から上下斜筋の伸縮のバランスが崩れ、上斜筋が伸び下斜筋が縮む状態だと右目では反時計回りに、左目は時計回りの回転ズレが起きることになる。更に左目の上直筋が伸び、下直筋が縮んだ状態になると、遠くのものほど上にずれた網膜像になり私の複視の症状と合致する。ただ左目の場合は水平方向に、左から右側に視線を移動しようとすると突然動かなくなったり、ゆっくりとしか視線を移動できなくなることがあるので外直筋と内直筋の協調運動にも問題があるようだ。これは神経麻痺によるものか。事故後、3か月ほどひどい目まいが続きましたが、この「めまい」にも病名が付いているようです。眼球振盪(がんきゅうしんとう)というらしく、「末梢性めまい」の症状が私の症状にぴったり。

 

末梢性めまい

中枢性めまい

めまいの性質

回転性

浮遊性

めまいの程度

重度

軽度

めまいの時間性

突発性、周期性

持続性

めまいと頭位、体位との関係

あり

なし(例外あり)

耳鳴、難聴

あり

なし

脳神経障害

なし

あり

眼振

一側方注視眼振、回転性、水平性

両側方注視眼振、縱眼振

 事故から7ヶ月経ち、現在の状況は目を閉じて眼筋を弛緩させた状態でまだ2~3度(1m当たり3cmほど)ズレています。夜中にトイレに起きる時や、早朝に目を覚ましたときは、視野全体に複視の状態が現れ、数十秒から数分経つと左右のズレが徐々に一致していくという症状が現在でも続いています。日中や疲労が溜まっていないときは両眼のズレは気になりませんが、夜や目が疲れてくると複視の状態に逆戻りしてしまいます。つまり根本的な眼球のズレはまだ残ったままということ。事故当時から比べればそのズレは4分の1程度に改善されてきていますが、完全には、事故前の状態まで回復できていません。

 はたしてこのズレは生涯残ってしまうのか、これからも続けるリハビリで改善されていくものかどうか、まだわかりません。専門家の意見では回復期間は半年から1年くらいらしい。それ以上になると症状は固定化し後遺症として残ってしまうとのこと。老化して眼の筋力が衰えてきたら改善していた複視の症状にまた老後も苦しめられるのか、という不安が頭をよぎります。

 私の体験でわかることは、5~6度の外傷性のズレなら眼球の運動リハビリでかなり改善できるように思われます。10度以上ずれている場合は自然治癒は難しいのではないでしょうか。

 そうはいっても数度のズレでも本を読む、字を書く、コンピュータの画面を見る時、また細かい手作業をするとき、手元で数ミリから1cmほどズレることがあるので大問題です。ソファに横になって本を読んだり、テレビを見ることができないだけでもストレスは溜まります。

 複視は眼筋を弛緩した状態でズレがなくなっていないと完治とはいえません。弛緩した状態でのズレが残っている間はいくら日中よく見えていても、目が疲れてくると複視の状態に簡単に逆戻りします。こんな状態では、仕事で車を運転することも危険です。 困ったものです。片目で見れば良いかというとズレはなくなっても今度は遠近感がなくなり、帯に短しタスキに...です。

 七ヶ月で4分の1にズレが矯正されたことを励みに、どこまで改善できるか、これからもリハビリを続けて経過を記録していきます。予定では5月一杯で完治すると思ってリハビリに励んでいたのですが、どうもまだまだ努力しないといけないようです。

 先天的な斜視の方々は私よりも大変だと思います。複視を体験するまで、斜視とは単に黒目が偏っているくらいにしか理解していませんでした...、お恥ずかしい。 ところが物はずれて見えるは立体視はできないはで、大変なことなんだとわかりました。