2010年5月29日土曜日

どんなふうにズレて見えるかを観察

 自分の両眼がどのようなズレを起こしているのか正しくわからないと闇雲にリハビリすることになってしまいます。最初の頃はただ目を動かすストレッチのようなリハビリに留まっていましたが、これでは左右のズレを矯正するには不十分だと感じ、複視の状態をまず良く観察してどんなリハビリをすれば効果が上がるかを試行錯誤しながら考えました。

 まず左右のズレをどのように計ったかというと、頭を傾けず真っ直ぐ前方を見つめ、水平・垂直線が左右の目に映る像でどのくらいずれるかを比較。なるべく遠くの建物や視野全体に広がった対象物で大きさのわかっている物の縦横の線を測定基準にしました - そのほうが計測する上で誤差が小さくなると考えたからです。


 ①病院の前の道路(4車線)の反対側にある二階建てのビルのズレを目測。


 水平距離にして20mはなれた2階建てビルが丁度、3階建てに見え、水平線が時計回りに10度ほど回転しているように見えました。

 遠くに行くほど縦のズレが比例して増加するのに対し水平線の回転ズレは一定でした。また横方向のズレはほとんどありませんでした。


 ②立った状態で足元を見て自分の足や床のタイル目地のラインがどう見えるかを観察。


 右目で見える像に対する左目のそれは、1.5mの高さから自分の足を見ると縦方向に20cmほどズレて見え、30cm角のタイル目地は横3枚分に対し左端で15cmほど縦方向に、時計回りに回転してみえた。


 ③手を目の前に伸ばしてどのくらいズレて見えるかを目測。


 手と目の距離はおよそ60cmで、右目で見える手が左目では10cmほど縦方向にずれて見えていた。


 ④病室の回縁(天井と壁の交じわった境界線、長さが3mほど)の傾きを目測。


 視野の右端はズレず、左目の像では左端だけ上方向に45cmほどにずれ、右目では逆に10cmほど下がって見えた。





①から④を三角関数を利用して計算すると上図(視野の横方向をX軸、縦方向をY軸、視線の方向をZ軸)のような結果になりました。

 この結果からわかることは、右目がZ軸回りに反時計回りに2度ほどズレ、縦横のずれは無視できるほどの値。

 一方、左目はX軸、Z軸回りに9度くらいズレていたのです。つまり左目の視線が少し左下方向に下がって斜視の状態になっていたことになります。外見上、黒目の位置がずれて見えるほどではなくても複視になるには十分なズレを起こしていたわけです。


 整理すると、私の目は下の図のようになっていたと考えられます。




注)3次元軸のずれる方向は網膜像で見えるズレの方向と逆になることに注意してください。


 X軸回りのズレは縦方向に物がダブって見え、Y軸回りのそれは横方向に、Z軸回りでは斜めに傾いて見えるということです。


 この結果から目の筋肉がどのような状態になると視野の座標軸が上図のようにズレるかを考えました。


 次回に続く...。






2010年5月25日火曜日

目に何が起きたのか

 私の複視は両眼性でした。複視は二つに分類されるらしい。単眼性の複視と、両眼性の複視。単眼性のそれは、片方の眼を隠して、ひとつの眼で見ても、ものがダブって見え、両眼性は、片方の眼を隠して、単眼で見ると、ひとつに見えるが、両眼で見ると、ものがダブって見える。


 両眼性の複視は、左右の眼球の位置がずれて、斜視のような状態になったもの。眼球の位置が横にずれていれば、左右に同じ像が二つ見え、眼球の位置がたてにずれていれば、上下に同じ像が二つ見える。私の場合は縦に少し回転(10度から15度程度)したようなズレかたでした。

 事故で頭を打ったときの衝撃で両眼を動かす筋肉とそれを制御する神経系がダメージを受け斜視のような状態になったようです。幸い眼球自体に損傷はなかったので両眼性の複視で済んだのだと思います。ダメージの割合は左目が80%、右目が20%くらい。








 症状は座った状態で頭を左側90度に傾けた時だけ正常に見えました。それ以外の状態では物がダブって見えて、右側頭部が下側になったとき、一番ずれかたがひどかったです。骨折で体を自由に動かせず、いろいろな姿勢で頭の位置や角度を変えて複視の状態をチェックできずにいたので、複視の症状の全貌を把握できたのは数ヶ月でした。


 事故後2ヶ月ほどは、たいしたリハビリもせずメチコバールというビタミン剤を服用していました。右腕と左膝を骨折していて車椅子状態だっため、そちらの治療がメインで目のほうは自然治癒任せ。もちろん眼科には通院していました。目のリハビリは退院後にインターネットで調べて独自に考えました。今でも実践しています。現在は90%近く回復。ただ寝不足などで眼精疲労がたまると一時的に以前のダブった状態に戻ります。ひどいときは数日、元に戻らないこともあります。疲れが取れると回復しますが。


 回復中は、頭の位置、角度によりますが、対象をじっと見ていると下のアニメ画像のようにズレた像が一致しようとするように動いて見えることが頻繁に起きました。

注)gifアニメーションが使えないのでyoutubeで確認してください -  http://www.youtube.com/watch?v=bfZX06gVOSA

 このような変化が見られる場合は特別なリハビリをしなくても4、5週間ほど経つと安定して一致するようになります。それ以外の場合は自分で考えたリハビリ方法を続ける過程で徐々に一致する範囲が増えていき、一致している時間も長くなって安定していくようになりました。


 半年ほどかかって、ずれた像が一つに見えるよう、目の動かし方を新たに学習したような感じです。気の遠くなるようなリハビリ量です。

 このブログで紹介するリハビリ方法は外科的に眼球の位置を調整しなくても済む比較的軽度のズレで苦しんでいる方にしか参考にならないかもしれません。



2010年5月23日日曜日

朝シャンでジェットコースター

 小生は右側頭部を強打していたため、頭を少しでも傾けたり動かすとひどい「めまい」 が起きるという状態が2ヶ月ほど続きました。はじめの1ヶ月はひどくて、めまいが数分続き、その後は10秒から40秒ほどに短縮し、3ヶ月ほどすると数秒程度の軽いものに収束していきました。めまいの程度はジェットコースターなど他愛ないお遊びに思えるくらいひどいものです。体がグルグル回る感じ。地球に帰還する際、大気圏に突入する宇宙船が姿勢を制御できなくなって激しく回転するとき飛行士が体験する時のような感じでしょうか。

 寝返りするたびに目が回っていました。入院後半になると、寝ているときは安心して「めまい」を楽しむ余裕もできました。どんなに目が回っても吐き気はなかったので助かりました。ただ「めまい」のせいで歩行のリハビリは大幅に遅れました。

 入院中の入浴は週に2回だけ。ちょっと少なすぎますね。まあ集団生活だからしょうがないか。その間、よく洗髪だけしていました。

 入院後2週間ほどして朝シャンデビューしようと洗面所へ。

 勢いよく頭にシャワーをかけたとたん...、突然めまいが襲ってきてそのまま洗面台にバッタリ...。それから数分身動きがとれない状態が続きました。浴槽の中だったらおぼれていたでしょうね。危ない危ない。車椅子に座って洗面台に寄りかかる状態だったので事なきを得たというわけです。

 頭皮に熱刺激が加わっただけで「めまい」が起きるなんて驚き桃の木。それ以来、頭にシャワーをかけるときは勢いよくかけず慎重に髪を少しずつ濡らしていくようにしていました。3回目くらいになると徐々に慣れていって軽いめまいですむようにになりましたが。


 生まれてはじめての入院生活はトワイライトゾーン体験のようなものでしょうか。

 



2010年5月21日金曜日

複視とはどんな世界か

 体験していない人には、ずれて見えるというだけでは一体どんな風に見えているのかわかりにくいでしょう。イメージで説明しましょう。



 たとえば食事のときは以下のような光景になります。




食器が二重に見えるだけでなく箸やスプーンを持つ手も二重ですから、手で食器をつかむ動作から箸で食べ物を挟むといった動作までひと苦労で食事を楽しむどころではありません。






 歩行時の廊下は傾いて見え、ビックリハウスの中にいるような感覚です。床が傾いて見えるので手すりがないと真っ直ぐ歩くことが難しく、また通路に置かれた物や人とすれ違う際、自分と障害物との距離がよくわからないので手で距離を探りながらやり過ごすか、大きく迂回するように歩いていました。




 階段は一段ずれて見え、足で探りながら一段ずつ慎重に昇降しなければなりません。







 トイレでは、二重に見える便器に立ち小便をすることが難しい。的が二つに見えるので便器からそれないように注意しなければなりません。大抵は座ったまま用を足していましたが。


 私の場合、こんな生活が五ヶ月以上続きました。現在でも視野の一部に複視の症状が残っており、寝不足などで眼が疲れていると以前の状態に戻ってしまうこともあります。


 症状が重かった間、テレビを見たり本を読むこともできませんから唯一の娯楽はラジオや音楽を聴くことでした。


 普通に見えると思っていたことが実は微妙で繊細な視神経、眼、筋肉等の働きに支えられていたことを思い知らされました。

普通に見えるってことはありがたいことなんですね。

2010年5月16日日曜日

バイクに大当たりで複視になる

 昨年の10月初め、交差点で接触事故を起こしたバイクが歩道を歩いていた小生に突進してきて大怪我を負いました。事故に遭うまでは交通事故は他人事でしたが、いざ自分がそうなってみるとどんなに大変な苦労をするか身をもって痛感することになりました。

 病院に搬送されて意識が戻るまで事故に巻き込まれたことも記憶になく、自分はコンビニに買い物に行く途中でまだ歩いていると思っている状態でした。意識が戻って最初に考えたことは、”どうしてコンビニにつかないんだろう?”という思いでした。バイクにはねられる5~10秒前から病院で気がつくまで記憶はなく、後から何が起こったのか説明されてようやく自分は事故に巻き込まれたことを知った次第です。
 あれからもう7ヶ月が経ち、ようやく全快の一歩手前くらいのところに到達しました。骨折と複視で随分苦労しました。診断書では全治3、4ヶ月といっても実際に社会復帰できるような状態まで回復するにはその倍はかかった計算になります。複視の症状が改善するのに半年以上もかかったことが大きな原因ですが。

 複視のリハビリ方法をインターネットで検索してもあまり詳しい情報が入手できなかったので小生の体験的リハビリ法をこのブログで紹介していきたいと思います。複視で苦しまれている方々になにか役立つヒントになればよいのですが。